chap2.世界標準の経営理論を構造推定の観点からメモ書き
p50. SCPは経営学的にはもっとも綺麗にフレームワークに落とし込まれた理論。ファイブフォース+戦略グループ+ジェネリック戦略(cost leadership or differentiation)。フォース1potential entrantsは参入固定費次第で動学では入ってくる。,フォース2rivalryはゲーム理論が絶対必要。フォース3force of buyerは需要サイドの話だが交渉力という表現は微妙、そういうモデル化ももしかしたらできるのかもしれない。フォース4force of supplierはvertical relationshipがいきなり入ってきた。このふたつは市場をB2Bの上流&下流と下流&顧客関係を同時に考えようとしていて経営学ポイね。フォース5substitutesは需要サイドの話で、IO的にはフォース3と「同値」といえる。
p52. 自動車が飛行機を代替する手段、ってのは産業を飛び越えてるので例として不適切。どちらかの産業に固定して、もう片方をアウトサイドオプション(変動を許す)で分析するしかない気がする。フレームワークを図示するとビジネスマンには売れるというのは皮肉な話、
p53.第一の将来予測に有用、というのは、モデル化されていると適用しやすいという話か?第二の複数階層でファイブフォース分析を行う重要性、というIOにおける「地理、時間的産業区分t\in T」をデータにおいてどう定義するか、という個人的に最重要な設定と重なる。リサーチとデータのデザイン次第であるが。
p54. 製品セグメント構造などを基に戦略グループを分ける、というのは雑すぎる。IO的には産業と製品セグメント設定はgivenなので、恣意性はそこにしか入り込まない。せいぜい需要推定と価格弾力性&シェアによる代替関係で分けることはできそうだが、もしかしたら文献はあるかもしれない。
p55. 幅広い顧客対象&ニッチ狙い、という軸も追加、っていうのは、理論IOでも比率αで需要サイドのWTPを分けて分析するのがあったはず。戦略論の教科書にはジェネリック戦略に紙面を割くが、一般の教科書はそんなに割かない、ってのは知らなかった。
p57. ウォルマートの地方部には大手ライバル企業が少ないので、低価格戦略によって独占的ポジションがとれる、というのは参入+地理的市場+チェーンストア、さらに価格戦略設定も入れるモデルといえるが、Igami&Yang(2016QE)などしかないかも。自明でないし面白いかも。大規模な流通システムも、distribution center IVを使う文脈として解釈できる。
p58.両取り戦略は、multiproduct firmでそれぞれのproductの戦略を分けれるのであればwell-definedだが、ベルトラン価格設定FOCで両戦略を分けるのは自明でない。理論的にも面白いのか?
p59.収益性は産業固有か、企業固有か、という実証は、当時は斬新だが、今同じような回帰分析やるのは新鮮味がない。COVでばらつき分析、などもIOというよりマクロな実証という感じ。
p61.戦略グループの実証はnot well-definedなので、全部怪しい。心理的な戦略グループは、行動経済学理論のモデルに組み込まないと同様にnot well-define.直感的には、反応関数内のrivalのaction&beliefをどう外生的or内生的にモデル化するか、という話になるはず。自明ではないし、モデルが閉じるかも不明。実験はあるかも。
p.62.一時的な/持続的な競争優位という概念は動学。同額で競争優位をどうモデル化するのか自体が自明でないし、model specific。基礎付けできるならば面白いかもしれない。
p.63 以前より競争が外生的な理由で厳しくなることを、ハイパーコンペティションと経営学ではいうが、経済学だとおそらく産業衰退&退出のモデル(Takahashi2015AER)あるいは外生的なoutside option valueの変動で産業が相対的に魅力なくなるモデルだろうか。説明できないものをハイパーと定義するのは、なんでもありで個人的にはムムム。
p65. SCPの前提条件をやるなら、経済学やればいいじゃない、という気もする。