構造と識別~構造推定と計量経済学に関するトピックを紹介する

踏み込んだ構造推定の日本語の文献がネットに転がっておらず、「構造推定」という響きのかっこよさに夢を抱いたりする人や、響きのうさんくささに勘違いしている人も多いので、土地勘のある自分が日本語でまとめます。気が向いたら。全ての記事はベータ版でござい。

chap3. RBV.世界標準の経営理論を構造推定の観点からメモ書き

chap3. RBV.世界標準の経営理論を構造推定の観点からメモ書き

 

p66. 1次元の生産関数グラフのインプットX軸に着目するのがRBVで、アウトプットY軸に着目するのがSCPってのは、なるほど。1次元なのは経済学的には気になる。IOでは、アウトプット側を市場と定義して需要と供給分析するので、RBV的なインプットに相当するものは限界費用関数に入る共変量やコストシフターに相当する。企業間のやりとりや上流下流企業を定義してマッチングやバーゲニングで分析するものはまだまだ新しい分野だとおもう。

p68. ペンローズって女性なんだ。

p70.リソースの独占化、ってIOでは聞いたことない観点。「模倣しにくいもの」ってどう定義するのかあいまいかつ、ディエリックス=クール(1989)は「模倣しにくさはリソースの組み合わせにある」と考えるらしい。組み合わせで模倣しにくさをどう定義するつもりなのか不明。一応は、組み合わせの尺度は1蓄積経路の独自性、2因果あいまい性、3社会的複雑性という3条件が満たされるとき、模倣困難である、と定義される。正直、定義になってない。

p72. バーニー(1991)が提示した前提は、(1)企業リソースの異質性、(2)企業リソースの不完全移動性。これらが前提で、アウトプット側の議論であるSCPが成り立つかも議論される、らしい。

p73.仮定を基に、競争優位=「他社にはできない価値創造戦略を起こす力」と定義している。また「持続的な(競争優位)」=「長い間?ライバルよりも高い業績を出せる」と定義している。競争優位を実現するリソースの条件はvaluable&rarity、またそれが持続的であるための条件はinimitable&non-substitutableだと。まず競争優位の条件はトートロジー、かつ持続的の条件もトートロジーなので、命題自体がill-defined. 

 

p74. footnoteの競争優位=「他社が奪おうとする努力が消えているある種の均衡状態」という説明の方が納得できる。均衡を覆す方法を考えようの方が、生産的じゃない?

p77.財務パフォーマンスをデータにした雑な回帰分析をいくら積み上げても不毛。ほぼ信用できない。

p78.やっぱり、トートロジーについてはここで触れられてる。RBVは部分均衡、っていうのは、アウトプットとインプットを同時に雑に考えようとしたから一般均衡ぽくなってしまっただけなので、それ自体は問題ではない。産業を定義すれば、部分均衡でもモデルは閉じれる。

p79.ブラックボックスなのは定義なしでポエムで理論を綴るから。実務で使える、ってどういう定義か、実務家の視点は不明。

p82.アクティビティシステムが米国LCCのビジネスアクティビティの「つながり」を意味しているグラフらしい。nodeとtieの定義がまず一貫性がなく恣意的で意味不明。なので「絡み合うつながりの複雑さ」というものが定義できず、ビジュアルで「複雑そうに」見せかけてるハッタリ。

p83. 「複雑で」かつ「一貫性のある」システム、の一貫性の定義がない。意味不明。p84. footnote15の「一貫したアクティビティシステムのある企業は、価値を創造しやすい」とは、一貫性の指標が価値創造の指標に対してポジティブかつ有意、といいたいのか?経済学的にはすべてがnot well-defined.